アインの独白Diary♪
Ads by Google
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
MAGIC NUMBER 333
「…………ほ……本当ですか?」

外で子供達が遊ぶ声を聞きながら彼、三原修二は養護施設「創才児童園」の園長の言葉を半信半疑で聞き返した。



「あぁ。君、保育士の資格を取ってから本格的に就職を希望していただろう? ウチで雇ってあげたかったけど、ウチは……」

そう言って言葉を濁した園長だったが、それは決して修二を評価していないわけではない。
この創才児童園は元々スマートブレイン社が設立・経営していた養護施設だったので、そのスマートブレイン社が解体してしまった今、この施設は新たなスポンサーこそ見つかれど経営状態は逼迫、とまではいかないが前ほどの余裕はない。
アルバイトの賃金だからこそ修二ともう一人、阿部里奈を雇うことが出来ているが、正規雇用となるとそうもいかなくなってくるのだ。
それが分かっていたからこそ修二もここで働けないことに落胆などはしなかったが、しかし保育士として働くことを諦めてはいなかった。

「で、だ。君の希望どおり他の養護施設に雇用枠がないか探してみたんだが、そうしたら一つすぐにでも来て欲しいと返事を返してきたところがあったんだ」

修二は自分で就職先を探すのとは別に、園長のツテも頼っていた。
園長も修二の頼みを二つ返事で了承し、そして見事当りを引き当てたというわけだ。

「どこ、なんですか?」

驚きと喜びでまだ上手く頭が回転していないらしい修二が何とかそれだけ口にすると、園長は用意していたらしい大き目の茶封筒から資料を取り出して修二の前に差し出した。

「……麻帆良……ですか?」

「そう。学園都市の麻帆良だ。幼年部から一貫しているらしいが、そこの学園長が孤児の保護もしているらしくてね。養護施設もあるらしいんだ」

「そうですか……わかりました」

それだけ聞いた修二が他の資料に目を通すこともなく立ち上がる。
そして……

「明日お伺いしますと返事を返しておいてもらえますか?」

「……わかった」

「では、皆に挨拶してきます」















子供達との別れの挨拶を終えた修二。
アルバイトとはいえ子供達が皆別れを惜しんでくれたことは修二にとって、今までやってきた事が間違いではなかったという自信に繋がった。
そして……

「そうか……頑張って来い、三原」

「頑張ってね、三原君」

「よかったね、三原君」

修二は先の戦いの仲間達にも別れを告げるべく、『西洋洗濯舗 菊池』を訪れていた。
いまだに共同生活をしているらしい乾巧、園田真理、菊池啓太郎の三人は、修二の踏み出した新たな一歩を歓迎してくれた。

「寂しくなるね」

「でも、もう一生会えないわけじゃないし……ねぇ、里奈さん?」

そこで話題をふられたのは、修二に用件を知らされずにここに連れてこられた阿部里奈。
先のオルフェノク達との戦いのおり、臆病だった修二を支えてきたパートナーと呼んで差し支えない存在だった彼女は、それに笑顔で答えた。

「ええ! よかったわね、三原君!」

「……ああ……ありがとう」

しかしそのお互いの反応は他の三人にとっては些か拍子抜け。
普段ポーカーフェイスな巧も意外そうに目を見開いていた。
そんな三人の反応を見た修二と里奈は互いに顔を見合わせ、そして苦笑を零す。

「別に俺達、付き合ってるとかじゃないよ?」

「「「……は?」」」

「どっちかっていうと三原君、ちょっと頼りない弟って感じだし。恋愛対象じゃないわ」

「「…………えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!?」」

「……嘘だろ?」

「本当よ」

「……そんなに驚く事?」

「だ、だって俺達てっきり! ね、ねぇ真理ちゃん!?」

「ずっと付き合ってると思ってたわよっ!」

傍から見れば確かに、頼りなかった修二とそれを献身的に支えてきた里奈はそう見られていても可笑しくはなかった。
しかし当人達はそんなつもりはまったくなかったし、互いをそう意識したことすらない。

「ま、まぁいいじゃないか。二人共揃って違うって言ってるし……それに今日は三原だろ?」

「そうよ、乾さんの言うとおり。ちょっと急だけど折角だもの。盛大に送り出ししましょう?」

やたら大騒ぎする啓太郎と真理に辟易していたらしい巧がそう言って二人を冷静に窘めると、里奈もそう言って、

「どこがいいかしら?」

と本棚からグルメガイドを引っ張り出して店を探し始めた。
それにつられて他のガイドブックを引っ張り出して店を探し出す啓太郎と真理を優しげな笑みを浮かべながら見守っていた巧は、スッと修二の隣に移動してくる。

「……ベルトは、どうするんだ?」

巧の言うベルトとは当然、修二の持つデルタのベルト。
オルフェノクの王を倒し、スマートブレインが解体に追い込まれた後もそのシステム本体は宇宙空間にある為誰も手が出せず、放置されている。
という事はつまり修二の持つデルタのベルトもいまだ健在という事なのだ。
他に巧の持つファイズのベルトはもウルフオルフェノクでもある巧が管理しており、カイザのベルトは唯一最後に装着者としての資格を持っているスネークオルフェノク、海堂直也がサイドバッシャーと共に所有しており、現在は行方不明。
共にそう簡単にベルトを奪われるような愚を冒すほど弱くない。
そんな中唯一オルフェノクの記号の影響が強いだけの人間である修二がデルタのベルトを管理しているのは、彼がその最適合者であり、デルタとして戦い抜いた証でもあるからである。
そんなベルトをどうするのかを巧が気にするのは、それそのものの危険性を危惧してのこと。
デルタのベルトは初期段階で開発されており誰でも装着することが可能なのだが、不適合者はそのシステムにより凶暴化してしまうという危険な代物なのだ。
下手に他人の手に渡ってしまっては危険な代物だけに扱いに慎重になる巧だったが修二は、

「……持っていくさ」

そう言って微笑んでみせた。

「これはもう、俺の責任だから。それに……」

「……それに……どうした?」

「うん。少し、気になるんだ。勘ぐりすぎなのかも知れないけど……」

修二が気にしていたのは、何故修二だったのかという事。
全国で保育士をしている人間などそう少なくもないだろうし、何より学園都市である麻帆良がそれほど人材不足であるとは考えにくい。
だとすると……

「……お前がデルタだと分かっていて雇った可能性があるのか?」

巧も修二のその言葉だけで大体の事情は理解したらしい。
修二もそんな巧にただ静かに首肯する。

「それでも……いくんだな?」

「ああ。もしこの力を悪用しようとしてるなら、止めないといけない。この力に助けを求めているんだとしたら……やってみるさ。俺にどれだけやれるか分からないけど」

そう言って優しく微笑む修二。
そんな修二の変化を見て巧は内心、舌を巻いていた。
この自分より年上なのに気弱で頼りなかった青年がこの短期間で、これほどまでに強くなっている事に。

「……分かった」

だから巧はもう、本当に修二はデルタのベルトを託せる男だと判断した。
巧本人には周囲に、何かあれば窘め、咎めてくれる仲間がいる。ベルトの使い方を間違うことはない。
海堂は変わり者で露悪家だが、心根は優しく人間を愛しているからこそカイザのベルトを託すことに反対しなかった。
そして今修二も、本当の意味でベルトを託すだけの人間に成長した。

「お前になら、出来るさ。今のお前になら」

修二は翌日、仲間達に見送られて麻帆良へと出発した。
三人のベルトの持ち主の内もっとも優しかったその心に新たに、強さを宿して。















「……はぁ……すっかり遅くなってしまったわね」

そう一人ごちる泣きぼくろの女性、もとい少女は那波千鶴。驚異的なスタイルと大人びた雰囲気を誇る中学三年生だ。
普段から保育園で保母の仕事を手伝っている彼女は今、もう完全に日の落ちてしまった道をのんびりと歩いていた。

「……月が綺麗ねぇ」

見上げるとそこには、満月。
しかしその色に千鶴はふと、首を傾げた。

「でも……ちょっと、紅くないかしら?」

そう。
月が、紅い。

「昔から言うわよねぇ……こんな夜には物の怪が出る、って」

少し前聞いた都市伝説、と言うよりもちょっとしたオカルト話。
彼女が実年齢よりも年上に勘違いされてしまう理由はその容姿と風格の他にそんな、有体に言ってしまえば古臭い知識を持っているところにもあった。
しかしいくら実年齢より上に見られようと彼女自身が中学三年生である事には変わらないわけで……

「……早く帰りましょう」

やはりそんな不気味な夜道が怖くないはずはなかった。
そして、歩みを速めて帰路に着くそんな彼女の前に偶然か、それとも必然か……

『……ホウ……思イモヨラズ上玉ナ獲物ダナ』

「っ!?」

突如として異形のモノが、その姿を現した。
いや、羽音と共に降り立ったと表現するほうが適切か。

『栄養分トシテハ申シ分ナサソウダ』

大きな鴉のような翼を持った、まさにファンタジーの世界の鳥人のようなフォルム。
2mはあろうかというその黒い塊と千鶴との関係は、もはや決まってしまっていた。
いるはずのないそんな存在が突然目の前に現れてしまって、上手く思考が働かない。
しかし悠々と、まるで追い詰めるその行動すら楽しんでいるかのようなその鳥人に一歩、また一歩と迫られる千鶴には一つだけ、理解できている事があった。
目の前の異形は明らかに自分に害意を持っている、という事。

「い……いや……」

悲鳴を上げたり取り乱したりしないところはさすがと言うしかないがそれでも、恐怖心がないはずなどない。
しかしもう、その黒い塊は目の前でその爪を伸ばしてきている。

(あぁ……もう駄目、なのね。せめて痛くないように食べてくれないかしら?)

妙に落ち着いてしまっている自分の思考に何処か可笑しさを感じつつ、もう最後を覚悟した千鶴はゆっくりと目を閉じた。
しかし……

ドゥルルンッ!!!!

バイクの重低音が何処からともなく響き渡り、眩いライトが千鶴と、目の前の異形を照らし出した。

『ムウッ!?』

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

そして若い男の叫び声が千鶴の耳に届いたその次の瞬間、異形は千鶴の目の前からものの見事にバイクに跳ね飛ばされていた。
そして、それと入れ替わって千鶴の前に現れたのは……

「大丈夫っ!?」

「…………え?」

若い男だった。
青いルーズなシャツと、ベージュのチノパン。
いたって普通な格好をしたその男はしかし、その異形を目の当たりにしてなお千鶴を向いていた。

「怪我はしてないか?」

「は、はい」

「そうか……良かった」

そう言ってホッとしたようにフワッと表情を和らげるその青年、三原修二。
修二のあまりに普通な様子をみて千鶴は、突如として込み上げてくる感情を抑えることすら忘れてしまった。

「あ……あら?」

涙。
千鶴の頬には確かに、涙が流れていた。

「お、可笑しいわね? なんで涙なんて……」

本当に分からないのだろう。
首を傾げながらしきりに流れ落ちる涙を拭おうとする千鶴の頭に修二はただ、片手を乗せた。

「もう、大丈夫だよ」

そう言って軽く、撫でるように手を動かしたその時、千鶴はやっと理解した。
自分は、怖かったんだと。
そしてその恐怖から解放されたんだと。

『グ、グウゥ……オノレ人間メ。ヤッテクレタナッ!』

しかしそれも束の間。
すぐに千鶴の耳に、その恐怖の対象の声が届く。
バイクで跳ね飛ばされてもたいして堪えていないどころかその異形は、先ほどよりも明らかな害意と敵意の視線を千鶴、ではなく、その目の前にいるバイクに跨った修二にぶつけていた。

「は、はやく逃げないと……」

しかし、そう言って千鶴が視線を向けたときその先にあったのは、先ほどまでの優しそうな表情ではなかった。
厳しく、その異形を睨みつけるようなその表情はまさしく、戦う男のそれ。

「……人には言わないでくれるかな」

そのまま修二はそういうと、バイクの後ろの荷台に乗っていた銀色のアタッシュケースのようなものに手を伸ばした。
そしてそれを素早く開けると、そこには機械のベルト。
それを腰に巻きつけて懐から少し変わった形の、おそらく携帯電話であろうものを取り出した。
そして……

「……変身っ」

“STANDING BY”

口元に持っていって彼が音声入力するや否や、機械音のような声が響く。
そしてその電話をベルトの右側にはめ込む。

“COMPLETE”

再び機械音声が聞こえると同時に彼は、光に包まれた。
そしてその場に白いラインの入った漆黒の鎧と、目の位置が朱色のフルフェイスのヘルメットのようなものを被った男が現れる。
千鶴には分かっていた。
それがつい先ほどまでそこにいた、自分を救いに来てくれた青年、修二なのだという事が。

「ファイア」

“BURST MODE”

ベルトから取り外した銃に、先ほどと同じように音声入力する。
そしてトリガーを絞ると、光弾が異形に向かって放たれた。

『ナニィィィィィィィィィッッッ!!!!?』

ただの人間にしか見えなかった修二の突然の変身に驚愕する異形。
撃ち出された光弾も避けきれず、

『グウオォォォォォォォォォッッッ!!!!!』

苦悶の絶叫。
完全に意表をつかれて、あっという間に形成は修二に有利に傾き、そして……

“READY”

ベルトからチップと取り外し、銃に装着すると銃身が伸びる。

「チェック!」

“EXCEED CHARGE”

体中の白い線に光が奔り、それが銃に集まっていく。
そして程なくすべての光が集結し、銃から撃ち出されたのはこれまで以上に光り輝く細長い光。

『グウゥゥゥッッッ!?』

苦悶の呻きをあげる異形の腹に突き刺さるようにして現れる円錐。

「ウオオオォォォッッッ!!!!」

真上に飛び上がった修二が右足をその円錐に向かって突き出した。
と、それとほぼ同時にその体は光に包まれ……

『グウオオオオアアアアアアアアアァァァァァァァッッッッッ!!!!!!』

貫通して異形の背後に修二が再び現れると同時に異形にデルタの青白い光が浮かび上がり、炎に包まれるように爆散した。
異形は灰となって消し飛び、そして修二がベルトの右から先ほどの電話を引き抜く。
と、鎧とヘルメットはスゥと消え、そこに再びダボッとしたシャツを着た修二が姿を見せた。
千鶴にはもう、何がなんだか分からない。
突然現れて自分を狙ってきた異形。
そこに颯爽と現れた、バイクに跨った修二。
その修二の姿が漆黒の鎧に包まれる変身。
もう完全に思考がついていけていなかった。
しかしそんな中でも唯一、これだけは理解出来ている。
それは……

「た……助かったの…かしら?」

自分に迫る脅威が目の前の青年、修二によって取り除かれた事。
それを理解し、そして修二の優しい笑みと、

「大丈夫?」

という心底自分を気遣う言葉を聞いた時、千鶴の緊張の糸がプツンと途切れた。

「え? ちょ…君!?」

自分の体が前に倒れていくのを感じながらもしかし、千鶴はまったく不安を感じていなかった。
なぜなら……見ず知らずの自分を怪物から守ってくれた彼が、地面に倒れそうになっている自分を助けてくれないはずなどないから。

「っと……どうしよう?」

心底戸惑ったような彼の声を聞きながら、千鶴の意識は緩やかに沈んでいった。

(あら……どうしようかしら? 私これじゃあお礼言えないわ……)

そんな、少しピントのずれた心配をしながら。
そして千鶴を何とか受け止めた修二もまた、途方にくれることになる。

「…………どうなってるんだ? ここは」















「さっきまでとは大違いだな、あの男」

千鶴を抱えて右往左往する修二を見下ろしていたその少女は、そう言ってニヤリと笑う。
その少女の横には、変わった耳飾をつけた緑色の髪の女の子が静々と立っていた。

「まぁいい。茶々丸、あれがジジイのいってた男で間違いないな?」

「はい、マスター」

茶々丸と呼ばれた少女が淡々とそう告げると少女は、その笑みをより深いものにして言い放った。

「さて、このままアレがああしているのを見ているのも悪くないが、これも仕事だ。さっさとジジイのところに引っ張っていくか」

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://wolfein.blog91.fc2.com/tb.php/27-3fdb7a12
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック